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ふみ函

映画「もしも建物が話せたら」

第27回東京国際映画祭で上映された
ドキュメンタリー映画「もしも建物が話せたら」を観ました。
[ 原題:Cathedrals of culture(=文化の聖堂), 2014年 ]


もしも建物が話せたら


26分×6パートのオムニバスドキュメンタリー映画。
「もしも建物が話せたら、彼らは何を語るだろう?」というテーマで
6人の監督たちが、制作総指揮のヴィム・ヴェンダースのもとに集結し、
それぞれ異なった都市からアイコンとなる建物を選び、
建物自身が語るユニークなかたちでその内部を描き出した作品。

・ベルリン・フィルハーモニー
(ドイツ・ベルリン)
監督: ヴィム・ヴェンダース

・ロシア国立図書館
(ロシア・サンクトペテルブルク)
監督:ミハエル・グラウガー

・ハルデン刑務所
(ノルウェー・ハルデン)
監督: マイケル・マドセン

・ソーク研究所
(アメリカ・サンディエゴ)
監督: ロバート・レッドフォード

・オスロ・オペラハウス
(ノルウェー・オスロ)
監督:マルグレート・オリン

・ポンピドゥー・センター
(フランス・パリ)
監督: カリム・アイノズ

冒頭のベルリン・フィルハーモニーホールは素晴らしい導入部でした。
建物自体も豊かな温かみが感じられますが、
観客を惹きつける語り口の鮮やかさは、さすがヴェンダース!
設計者シャロウンの像がふっと動き出し、
その彼が動いている場面だけモノクロになるところなど、
「ベルリン・天使の詩」の場面を連想させられます。
あの作品の天使たちはベルリン国立図書館に佇んでいましたが、
そちらも同じシャウロンの設計で、
開放的な広がりのある空間のリズムに共通性を感じます。

5番目のオスロ・オペラハウスは幻想的な印象。
あくまで白く透明感のある外観。
そこに真っ赤なガウンをまとって入ってゆく女性など、
白いキャンバスに色を塗るような鮮やかさ。
バレエダンサーの舞台稽古や本番の様子も印象的。
劇場は音や色や動きに満ちていてドラマティックです。

刑務所や研究所はそういう華やかさがないだけに、
いささか分が悪く、単調な印象。
特にソーク研究所は建物が語るというスタイルをとらず、
建築賛美のナレーションと同じような映像の繰り返しで、
ちょっとうとうとしてしまいました。

図書館員としては2つの図書館にも目を惹かれます。
2番目に登場するロシア国立図書館は圧巻!
1796年から1801年にかけて建造されたという、
ネフスキー大通りに面した新古典主義建築の建物。
ロシア最古の公共図書館とのことで、その古めかしさは、
何十年も前のまま時が止っているかのよう。
迷宮のような書架と目録カードボックスの連なり。
閲覧机の緑のスタンドライトはキノコを思わせる丸み。

司書が書庫へ本を取りに行ったり、
古ぼけたダムヴェーダで本を受け取ったりする姿にも興味津々。
出て来る本がどれもこれも古びて角も傷みがあり、
書架にブックエンドもなくて斜めになっているのも目立ちます。
現代にもまだこんなところがあるとは。
この作品はミハエル・グラウガー監督の遺作となったとか。

最後のポンピドゥ・センターは巨大な総合文化施設なので、
図書館だけではなく、美術館部分や映画施設なども登場しますが、
多くの利用者たちが居並ぶ閲覧席や現代的な書架は、
ロシア世界と見事に対照的。

建物は”鉄と木と記憶の箱”というナレーションが心に残りました。
彼らは皆、身の内に今までの記憶をひっそり抱えているのでしょうか。

2015年にWOWOWにてプレミア放送予定とのこと。
またじっくり見返してみたいです。



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「華 いのち 中川幸夫」

ドキュメンタリー映画「華 いのち 中川幸夫」を観ました。


”これがいけばななのか?!”とキャッチコピーにありますが、
まさに、いけばなというもののイメージを覆された作品
「花坊主」の写真を観た時の衝撃は忘れられません。


「花坊主」


最初、逆さまに立てられたガラス器のなかにあるものが何かは分からず、
ただ滴り染まった赤に、生命体の血を感じてぎょっとしたのです。
中に詰められたのは900本ものカーネーション。
下に敷かれた白い和紙に染みひろがった花液はまさに花の血。
ガラスのなかの、かたちを失いかけた花は肉のよう。
こんな発想、こんな表現を突き詰めた方がいたとは。

中川氏の作品や周辺の方々をモデルとした小説『幻華』(芝木好子著)を、
かなり昔に読んだ時も印象的でしたが、
今回、この映画によって氏の生涯を初めて知りました。
監督の谷光章さんは、中川氏の遠縁の方で、
氏の制作ノートなども織り込みながら、丁寧に描かれています。

身体的な障害を乗り越え、ただひたすらに花のいのちを極めようとする姿。
求道者のきびしさと、ぱっと笑った顔の大らかな魅力。
ただただ圧倒されました。すごい!


天空散華


2002年、新潟県の十日町で行われたというパフォーマンス、
「天空散華」の壮大なスケール。
上半身、手だけで舞う大野一雄さんともども、
もはや人智を超えた存在と感じられます。

なんとか上映最終日に駆けつけましたが、
この作品が観られて本当に良かった。
東京都写真美術館ホールは、
しばしば貴重な作品を上映してくれて嬉しいです。

次のクラシック音楽名作選も良さそうですね。


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元旦の早稲田松竹

2013年、穏やかに明けました。


元旦は毎月1日の映画の日でもありますから、
毎年映画館に足を運ぶのが恒例。


早稲田松竹


うちから一番近いのは早稲田通りの早稲田松竹。


早稲田松竹入口


普段は二本立て1300円ですが、今日は800円でお得。


ウインドウ


本日のプログラムは成瀬巳喜男監督の『稲妻』と『めし』。
昭和のこの時代の映画は、とても好きです。
昔の下町や山手の風景を見ているだけでも飽きません。

昨年の元旦もここで『東京物語』『東京暮色』を観ていて、
地震の揺れではっとしたのを思い出しましたが、
今年は何事もなく何よりでした。



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元旦に観た小津映画

2012年が始まりました。

まずまず穏やかな幕開け、と思ったら元旦からの揺れ。
いつ何どき、何が起こるか分らない、ということを
改めて思い知らされたお正月となりました。

実は映画館に居たのですが、
長めの揺れにざわめきはあったものの、
席を立つひとはいないまま。

観ていたのは近くの名画座の小津映画二本立て
名作『東京物語』(1953年)と『東京暮色』(1957年)。

「東京物語」紀子の部屋

何度か見ていますが、この中の東京の街がとても好きです。
空がぽっかりと広く、千住のおばけ煙突が屹立し、
狭いながらも心配りのあるつつましい暮らし。

「とってもきたないところですけど、よろしかったら」と
亡き夫の両親をアパートに招く紀子さんの優しさもいとおしい。


「東京物語」銀座風景

二人を案内して乗ったはとバスの窓から見える、
当時の丸の内や銀座の風景も貴重な映像です。

『東京暮色』で何回も映される、
雑司が谷の細い坂道はどのあたりかな。
またあのあたりの坂道や路地をお散歩したくなりました。


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中尾幸世さん

ユーロスペースの特集上映「佐々木昭一郎というジャンル」
最終日の上映に、ようやく行くことが出来ました。

大好きだった『四季・ユートピアノ』がNHKで最初に放映されたのは1980年。
翌年の再放送と、さらに数年後の再放送も見ていますが、
今回見るのは20数年ぶりです。

ユートピアノ裏表紙


この不思議なドラマ、というか映像詩の鮮烈な画面はいまもって新鮮。
ヒロインA子(榮子)を演じた中尾幸世さんの、透明感や澄んだ声の魅力。

「ふれるとダイヤのような音」
「冬の音は、遠くまで行く」
「光の速度で走った」

硬質でうつくしい、きらめくような言葉の数々。
細面の顔、アーモンド型の瞳は、モジリアニの絵のシルエットのよう。

イメージのいくつかは鮮明に覚えていたけれど、
毎日のように歩く神泉町のあたりも背景に映っていることを、
今になって知ってびっくり。

上映後のトークショーにあらわれた中尾さんが、
今もほとんど変わらぬ姿、変わらぬ澄んだ声であることに感激。

雪の故郷でのみつ編み、セーラー服、黒のもんぺの衣装は、
まるで戦時中の女学生のようだったけれど、
ドラマのなかで身にまとうインドのサリー衣装もお似合いだし、
雪のなかで佇む姿を見れば、ロシアの少女のようにも思えるし、
いろんな国のいろんな民族衣装がすんなりなじんでしまいそうな不思議なひと。
ご本人にお会いできるような日が来るとは。

パンフレットにサインをいただきました。
ありがとうございます。

ユートピアノ表紙

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